研究開発

社団法人日本機械学会 2009年次大会in岩手大学 2009年09月発表論文

社団法人日本機械学会 機素潤滑設計部門MPT2004シンポジウム 2004年11月発表論文「微小歯車の動力伝達における特性の検討」より

1. 緒 言

 近年の情報機器や医療機器の小型化や小型ロボット等の機構として、プラスチックの 微小歯車のニーズが急速に高まっている.また、最近モジュール0.1のプラスチック歯車を 用いた小型減速装置を搭載した小型プリンタの開発が報告がされている。
(1)しかし、 モジュール0.2以下のプラスチック微小歯車の動力伝達に関する特性については、未だ 明らかにされておらず、この特性を把握することが重要課題となっている。そこで筆者らは、 まずモジュール0.15を題材として、プラスチック射出成形歯車を試作し、この歯車の 変形・破壊強度、歯車寿命の評価試験装置を製作して実験を行い、その特性について 調べたので、結果を報告する。

2. 強度試験

実験に用いたプラスチック射出成形歯車の緒元は, モジュールは0.15の平歯車,歯数64,歯幅1mm, 圧力角20,転位無しで、材料はポリアセタールと 高強度材料であるガラス入りナイロンの2種類で行った。

2-1 実験装置
図1に、変形強度の試験装置を示す。測定用の歯車を固定したステージがマイクロステージによる微動する構造としており、相手側の金属歯車とピッチ円でかみ合うようにギヤ間ピッチを調整して実験を行った。金属歯車の材質はSUSで、モジュール0.15でピッチ円直径19.8mmに1歯だけ構成することで、1歯の変形強度の実験を行った。
また、金属歯車軸にはレバーが装着されており、ロードセルを固定したY軸ステージを動かすことで、レバーに荷重を与えることができる。荷重位置は回転中心から50mmの位置に与えた。また、変位計によりロードセルの変位量を測定することで、荷重と変位量をリアルタイムに測定できるようにしている。

2-2 変形・破壊試験
本装置を用いて、まずポリアセタール歯車で実験を行った。図2に、ロードセルの荷重と変位を,歯車の歯の位置に換算してまとめた結果を示す。この範囲では、トルクとたわみはほぼ比例関係にあることがわかる.図3に,この傾きδ(たわみ1mm当りのトルク)として、2材料を比較した結果を示す。ガラス入りナイロンは、ポリアセタールに比較して、約2倍変形強度が高くなっている。
図4に、同様の方法で、歯車の歯が破壊したときのトルクの値を測定した結果を示す。本試験においても、ガラス入りナイロンの破壊強度が約8割大きい。

Fig.4 Result of breakage experiment

Fig.1 Experimental apparatus of deformation gear

Fig.2 deformation experiment

Fig.3 Result of deformation experimant

3. 寿命試験

3-1 実験装置
本章では,前章で用いた歯車の寿命試験の比較を行った。図5に、寿命試験の実験装置を示す。駆動用のステッピングモータは、カップリングを介して歯車を固定する軸と直結している。本実験では,ステッピングモータの回転速度は2rpsとしている。従動歯車を固定する軸も同様に、回転負荷を可変するためのヒステリシス型の電磁ブレーキに直結されている。また、従動側のユニットは、歯車の軸間ピッチを変えられるように、マイクロステージにより微動可能としており、ピッチ円でかみ合うように調整して実験を行った。回転精度の測定は、レーザドップラ速度計により非接触で、従動軸に取り付けたプレートの回転速度変動率を測定している。
図6に、ポリアセタール歯車のトルク40mNmにおける初期の測定結果を示す。図左は、時間軸波形、図右はその周波数スペクトラムを示す。実験の回転速度は2rpsであることから、歯車のかみ合い周波数は128Hzとなり、そのピークレベルの値を読み取り、回転速度変動率としている。

3-2 寿命試験結果
図7は,ポリアセタールとガラス入りナイロンの寿命試験における回転速度変動率の推移を負荷トルクを変えて行ったと結果を示す。×は歯車の歯が破壊したポイントを示す。全体的に0.1%以下と非常に小さく、また破壊に至るまでに、大きく変化するといった傾向は見られないことから、歯が急激に破壊に至ったと推測される。
図8は、破壊したときの回転回数と、負荷トルクとの関係を示す。グラフの曲線の傾向から、同じ回転回数で比較したとき、ガラス入りナイロンの方が2倍近く負荷トルク大きく、これは前章の変形・破壊強度の実験と同様の傾向にあることが分かった。つまり、同じ負荷トルクに設定したとき、ガラス入りナイロンの方が高寿命である、と言える。

Fig.5 Experimental apparatus of life test

Fig.6 Velocity fluctuation ratio(%)

Fig.7 Velocity fluctuation ratio in life test

Fig.8 Relationship of torque and breakage life

4. 結言

 本研究では、モジュール0.15のプラスチック射出成形の微小歯車を製作し、ポリアセタールとガラス入りナイロンの2種類の材料を用いて、それらの変形・破壊強度と寿命の試験を行った。その結果を以下に述べる。
(1)微小歯車の変形・破壊強度において、ガラス入りナイロンはポリアセタールに対して、変形、破壊強度とも2倍近く大きい。
(2)寿命試験においても、強度の結果と同様にガラス入りナイロンの方が高寿命であり、同じ回転回数で比較したとき、耐負荷トルクが約2倍大きい。これより、微小歯車においても高強度・高寿命であるといえる。

この結果を踏まえて、今後他のモジュールや各種パラメータの実験を行い、微小歯車の特性の把握を進めていく。
本研究において、材料提供等協力をいただいた油化電子?の池田様、中濱様に、厚く御礼を申し上げます。

文献

(1) 片野,田村,照井,岩渕,清水,超小型プリンタの紙送り技術、日本機械学会年次大会、(2004)、229-230

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